『右手小指の赤い糸』


心臓の奥の熱いもの、あふれてあふれてどうしようもなくて

でもあたしはそれにしっかり蓋をする

こぼれないように、気づかれないように蓋をする。


体温計は平熱を指してて、けれど心は死んじゃうくらい高温で

体はあたしの思惑通りに、知らないふりを演じてる。



愛してるよ、ダーリン。
この気持ちは密かに心の奥にあって
この小さな体で大事に大事に包んでおくことしかできないけど

公にできないこの気持ちをわかってなんて言わないから


ただあなたが好きだってこと、隠すことしかできなくて

この気持ちを大っぴらに言うことはいろんなものを失うことで

本当は一番つきたくない嘘、ついてる自分が情けないけど


そんなあたしを好きという、あなたに返す言葉がないの



一番つきたくない嘘を、つくことを選んでしまうずるいあたしは


あなた以外を捨てることが出来ない弱虫



平然とした顔で、あなたじゃない人の隣で笑ってる

弱虫は今日も、心にでっかい蓋をして、熱いものを一生懸命しまってる。




愛してるよ、ダーリン。



心の中でだけ言える一言をあなたを思って呟いて




あなたに届けと願うだけ。

ずるくて嘘つきな小さい体は願うことしかしないのに


あなたは好きだと言ってくれる


あたしは返す言葉がやっぱりないから



一番つきたくない嘘を、やっぱり今日もついている。


06.?.?