「じゃあ、おれはあの女の部屋に行くから、おまえも適当にいい女んとこでもいって楽しんでこいよ。じゃあな」
そういって連れはそそくさと暗い照明の闇に消えていった。
残されたおれはとりあえず、時間つぶしのつもりで適当な部屋へと入ることにした。
ここは、男が女を買うところ。女が体を売るところ。
畳の上で夜な夜な男女が絡み合う。
おれは初めて訪れたこの場所に尻込みしながら、座敷へとあがる。
薄暗い雰囲気に圧倒されながらも、連れはうまくやっているだろうか、そんなことを考えていた。
なぁ、あんた、あたしとひとつ勝負しねぇか? あんたが勝ったらあたしを全部くれてやるよ。 そのかわり、あたしが勝ったらとっととここから消え失せな。 それくらいの度胸がねぇと、あんたにゃあたしを背負えねぇよ。 さぁ、やるのかやらねぇのか、とっとと決めな! |
|
確かに、自分でも勢い余って「あなたが欲しい」なんて凄いこと言ったと思ったけど…。 勝負とか…かなり弱いんですけど、おれ。 本当に、勝ったらおれのものになってくれるんですか? …何度負けても帰る気はないんですけど。 |
|
…おれ、こういうところは初めてなんですけど。 友達がここにお目当ての女性がいるそうで、 おれまで無理矢理付き合わされたんです。 …あの…えっと、綺麗…な黒髪ですね。触れてもいいですか…? ………。 あなたはどうしてこんなところで働いてるんですか? あの、言いたくなかったらいいんですけど。 |
|
あんた、変なヤツだな。 はじめて聞かれたよ、そんなこと。 ……売られたんだよ、母親に。 うちは下にまだ3人弟妹がいたからな。 まぁ今となっちゃあ、別に恨んじゃいねぇけど。 なぁ、あんた、こういうとこは初めてだ、っつったな。 折角金払ってあたしんとこにきてるんだ、思う存分、好きに遊んでいきなよ。 |
|
ここを出たくはないんですか? 籠の鳥みたいに…ずっとここで男に抱かれているつもりなんですか? おれは……… ……あなたが…ほしいです…。 おれとここを…出てくれませんか…? |
|
……出る?ここを?あんたと? あたしがほしいだって? …はは、そんなこと言ったやつもあんたが初めてだよ。 あんたは他の男とは違うってのかい? ………。 |
|
なぁ、あんた、あたしとひとつ勝負しねぇか? |